「物欲センサー」という言葉をご存知でしょうか。
ネットゲームで「アイテムが欲しいもの程ドロップしない」事をそんな感じで表現しますが、ネタだとわかりつつ「でも、本当にそうなんだよな…」と思っている人は多いのではないでしょうか。
実際のドロップ率を全て表に残し、統計を取れば確実に出現率はその値に収束していくはずですが、理屈ではわかっていても納得できません。
その納得できない理由はどのへんにあるのか、色々と無駄に考察してみようと思います。
一人における、試行回数の限界
このゲーム絶対○○取れない。確率がおかしい、偏っている
それを諭すように、確率は膨大な試行回数が必要である、と語られる事があります。
膨大な試行回数って何回くらい? と思ったので調べてみました。
- 確率分母の 100 倍の試行回数をこなせば、95% の確率で誤差 ±20% 以内の確率になる
- 確率分母の 400 倍の試行回数をこなせば、95% の確率で誤差 ±10% 以内の確率になる
- 確率分母の 1000 倍の試行回数をこなせば、99.85% の確率で誤差 ±10% 以内の確率になる
これを例えばゲームのアイテム(ドロップ確率は20%としましょうか)で考えると…。
確率分母の 100 倍 | 500 回試せば、95% の確率で誤差 ±20% 以内の確率 |
確率分母の 400 倍 | 2000 回試せば、95% の確率で誤差 ±10% 以内の確率 |
確率分母の 1000 倍 | 5000 回試せば、99.85% の確率で誤差 ±10% 以内の確率 |
これが 1 回 10 分のプレイであれば、500 回試すには 5000分(≒83.3時間)。
無理です、心が折れます。
しかも、そこまでやって 95% の確率誤差 ±20% という微妙な確率です。
5% の確率で誤差 ±20% を引く猛者も出てしまいます。
なお、これが確率 5% のドロップ品の場合、試行回数は更に増えます。
確率分母の 100 倍 | 2000 回試せば、95% の確率で誤差 ±20% 以内の確率 |
確率分母の 400 倍 | 8000 回試せば、95% の確率で誤差 ±10% 以内の確率 |
確率分母の 1000 倍 | 20000 回試せば、99.85% の確率で誤差 ±10% 以内の確率 |
以上から、「一人で確率を実感するまでプレイする」のはちょっと難しそうです。
ついついツイッターなどで「あの○○の確率おかしくね?」と愚痴ってしまうのも、仕方ないのかもしれません。
確率の勘違い
1% でゲットできるものは 100 回で 100% だと思ってしまうもの。
ですがこれは間違いです。以下に確率と回数でどれだけ当たるか、計算式を用意しましょう。
確率 1 % / 100 回で当たる確率の計算式は 1 - ((1 - 0.01) ^ 100) = 0.633 ≒ 63%
1% しか当たらないものを 100 回でゲットできる人は 100 人中 63 人です。
200 回では 87 人、300 回だと 96人、400 回だと 98.3 人…。
100 回どころか、400 回やっても 100 人に 1 人は当たっていない事がわかります。
ここで確率 2 倍、期間限定で 2% あたりの場合、100 回でゲットできる人は 87 人。
試行回数 200 回と確率が同じになりましたが、当たる確率自体は 24% しか増えていません。
ではなぜ 1% でゲットできるものは 100 回で 100% だと思ってしまうのか。
幼少にハマった、こういうもののせいかもしれません。
人の思考特性
同じ人が、次の2つの確率を引いたとします。
確率 1% の幸運に恵まれた … 自分ツイてる! 流れが来てる!
確率 1% の不運に遭遇した(99% は当たりなのに) ... クソゲー。ありえない
どちらも確率 1% の引きなので、確率 としては「すごいヒキ」が2回ですが当然そうは思えない。
また、幸運は「自分の力」と思ってしまう。こんなこと、ないでしょうか?
ここまで露骨な2ケースであれば「±0 かな」と思えますが、実際はもっと様々な確率を引いており、幸運は「自分SUGEE」で忘れ、不運だけが記憶として蓄積していく…。
そうなると、確率に対する正常な判断は難しいかもしれません。
また、私を含めて人は心地よい感覚を信じ、精神的苦痛を与えるような厳しい事実を受け入れたがらない性質があります。
これを 感情バイアス などと言いますが、これのお陰で 1% どころか 0.2% しか当たらないようなガチャに挑戦する事ができるのだ…と思われます。
0.2% を 100 回 30,000円 | 18% の人が当たる |
0.2% を 200 回 60,000円 | 36% |
0.2% を 300 回 90,000円 | 45% |
0.2% を 400 回 120,000円 | 55% |
0.2% を 500 回 150,000円 | 63% |
10 万円出しても 2 人に 1 人しか当たりません。10 万円ですよ…。
冷静に考えればほぼ散在確定ですが、それでも狙っていくのはやはりバイアスが働いているのでしょう。
ちなみに2020年のサマージャンボ当選確率は 1000万分の1(0.00001%)です。
当たるわけがない。
でも、どこかで誰かが当たっている。なら、それは自分かもしれない。当たるかもしれない。5年もやってれば…。
バイアスがかかっている、と理解していてもやっぱりそんな風に思えてしまいます。
総論
いかがでしょうか?
こうしてあからさまに数字が表になっていれば冷静に把握できますが、感覚とのズレも大きかったのではないでしょうか?
結局のところ、人は確率を理性ではなく、感情で捉えてしまっている…人は思うほど論理的ではなく、感情が先に立つことを、改めて強く感じました。
うぇ~い。