Unity Runtime Fee で今後どうなってしまうのか?

Unity がとても素晴らしいゲーム製作ツールである事は疑いありません。
ただ、マネタイズはけして成功していたとは言えず、Unity「社」としてはここまで常に問題を抱え、歩んできたと思います。
株価の低迷がそれを物語っていたでしょう。

この問題の解決に向けて、Unity は 9/12 に Unity Runtime Free という新しい料金システムを発表しました。
このシステムがどういうものか、それによって我々にどういう影響が出るのか考えてみたいと思います。

Unity Runtime Free

簡単に言うと、ユーザーがダウンロード・インストールした回数をもとに利用料金を決めるというルールです。

Unity Personal および Unity Plus: Unity ランタイム料金は、過去 12 か月間に 200,000 米ドル以上の収益を上げ、インストール数が少なくとも 200,000 であるUnity Personal および Unity Plus で作成されたゲームに適用されます。

Unity Pro および Unity Enterprise: Unity ランタイム料金は、過去 12 か月間に 1,000,000 ドル以上の収益を上げ、かつ少なくとも 1,000,000 インストールされている Unity Pro および Unity Enterprise で作成されたゲームに適用されます。

例えばあなたが Unity Personal であれば、年間約 2,800 万円を稼いでいた場合、インストール数が 20 万を超えていたら、Unity 社にたいして 200,000 x 0.2 = 40,000ドル、560 万円を Unity 社に対して払う必要がある、と言うことになります。

1ドル = 140 円として便宜上計算しています。

元々 200,000 米ドルを稼いでいたら Unity Pro にする必要があったのですが、その場合年間 267,960 円を支払えばよかったのに比べるとこれは圧倒的な値上がり、と言えるでしょう。

Unreal Engine であれば、売り上げが 3,000 米ドルを超えると、ロイヤリティを 5% 支払う必要があります。$200,000 ならロイヤリティは $10,000、140 万円ほどです。

今まで Unity は Unreal に比べて「敷居が低い、安い、でも 3D は Unreal に少し劣る」といった印象でしたが、このうち「安い」部分がなくなってしまいました。

ダウンロード数?

そもそもダウンロード数でプライシングを行うのにはいささか無理があります。

誰が数えるの?

さすがに Unity Runtime が勝手に通信を行ってダウンロード数を検出するのは無理があるでしょうから、自己申告だとは思いますが、

  • ダウンロード数がわからない配布先を利用していたらどうなるのか
  • 1人のユーザーがアンインストールした後、再インストールしても1カウントか

1ユーザーが PC 買い換えて新たにインストールした場合はどうなるんでしょう。
開発会社に利益はありませんが、Unity に新たに支払う必要があるんでしょうか?

また、製作者がテストのためにダウンロードや再インストールを繰り返してもカウントするんでしょうか? テスターは?

すべてが曖昧模糊としています。

表記が曖昧

Unity より発表された表ですが、

  • Type A: 20 万を越えたら、200,001 から 1 として数えるのか
  • Type B: 20 万を越えたら、いきなり 200,000 と数えるのか

これ、どちらなんでしょう? 普通に考えると上のような気がしますが、はっきりとそう書かれていないので不安が拭えません。

また、Unity Pro(以上)ならダウンロード数増えたら安い、というのも眉唾に見えます。
というのも、New installs per month という文言。おそらくこれ、毎月「1から数える」って事ですよね?

つまり、毎月 20 万ダウンロードの場合、Unity Pro だと毎月一番高い $0.15 を支払い続ける事になるのでしょう。

インストール数は多いけど儲けが出ていない=赤字ってことも……

昨今の無料アプリはそのほとんどが「ダウンロード数を稼いで、その数%のユーザーに課金してもらったり、広告をクリックしてもらう」スタイルです。

ここで、例えば 100 万ダウンロードされているが売上は 20 万ドル、ギリギリだった場合を考えてみましょう。
Type A なら 80 万 x 0.2 = 16 万ドルを Unity に支払うため、儲けはたった 4 万、Type B だと、なんと儲けはありません。

Unity Pro に変更することで、多少支払いを抑えることは出来ますが、以前はゼロで済んだ費用が新たに約 30%、それに加えて Pro による年会費も発生することを考えると「新たなストア使用料が出現した」レベルのマイナスです。

上前のハネ方が尋常じゃない、そのように感じます。

Unreal が超安く見えてきた

今回のプライスが実行された場合、Unreal の場合は売上にたいして 5% なので、Unreal の方が全然安い、という状況になりかねません。

わかりやすいのもいいですね。Unreal の場合は利益が $3,000 を越えなければタダ、超えても 5% ですので、先ほどの売上 20 万ドルの場合、1 万ドルを支払えばいい。

価格という Unity の大きなアドバンテージが完全に消失するため、Unity だから利益を出していた会社はどんどん撤退してしまうんじゃないでしょうか……。心配ですね。

特に利益に依存しない開発者は

個人製作で 3000 万稼いでる人はそうそういないので、多分これまで通りなんでしょう。

一番割を食うのは「広告売上のみ、ダウンロード数の多さでなんとか食いつないでる」ような中小ゲームデベロッパーだと思います。

それらの会社が撤退した結果、Unity が衰退するというシナリオはありえると思います。

株式市場では

この情報が出た 9/12 一旦株価は下落したものの、一旦持ち直してはいます。
今回の件で離れる開発会社は少なくないと思います。
それでも、今より Unity が利益体質になるチャンスなのかもしれません。そういった思惑が交差して、株価は踏みとどまっているのでしょう。

CEO、自社株売ってたってよ

報道によると、リッチティエッロCEOは2023年に入ってからUnity Technologiesの株式を累計5万610株(約2億7,000万)売却。

他にも同社のグロース部門の責任者であるトマー・バージーブ氏は、9月1日に3万7500株を約140万6250ドル(約2億700万円)で売却。取締役のシュロモ・ドブラット氏は8月30日に6万8454株を約257万6608ドル(約3億8,000万円)で売却。

https://gigazine.net/news/20230914-unity-ceo-sold-stocks-dev-fees-announcement/

さすがにダメだろ。

おわりに

たしかに Unity、旧 Twitter 並にマネタイズに失敗してるなーとは思ってましたが、今回の決定は少し重すぎる気がしますね。せめて売上の〇%にして欲しい。
当然、多くのゲーム開発者から大反発を受けていますが、今後どうなっていくのでしょうか。

そのまま施行された場合、2024/1/1 から早速、過去 12 ヵ月間のダウンロード数に応じて支払いが命じられるんでしょうか? そのへんも曖昧なので、インディーズデベロッパーの中には早くもゲームを Steam から撤退させるなど、色々と混乱も起きているようです。

「いかにも心ない経営者に Unity Technologies が弄ばれている」ように見えますが、果たしてどうなっていくのでしょうか。

Unity に罪はありませんし、とてもいいツールだと確信しています。これまで培ってきた技術の蓄積も素晴らしいものがあります。
今後もそのポジションを貫いていって欲しい、そう願っています。

でも、経営者はアカンかも。


返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA